共同研究「低稼働内航船に適した船底防汚塗料の実船検証ならびに船体とプロペラの性能モニタリング」
Last Update 2024.11.25
海事科学研究科藤本昌志教授(海神丸船長)、尾崎高司講師(海神丸機関長)、石田達朗准教授、付属国際海事研究センター三重野紘央リサーチフェローは中国塗料株式会社、株式会社三井造船昭島研究所、ナカシマプロペラ株式会社、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所と「低稼働内航船に適した船底防汚塗料の実船検証」のテーマで共同研究を実施しています。本共同研究は、海神丸の@海上公試模擬試験による新造船からの性能変化評価結果とA試験実施時の船体・プロペラ汚損評価結果を対比することにより、船体・プロペラ汚損の性能への影響を可視化すること、海神丸のような低稼働の内航船に適した高性能防汚塗料の検証を行い、適用による燃料削減効果やCO2削減効果を学術的に評価することを目的としています。
今年度の夏季研究航海※1にて、淡路島の志筑沖にて、海上公試模擬試験と水中ドローンによる船体観察を行い、船体・プロペラの汚損に起因すると考えられる15%の馬力増加を確認しました。ドローン調査の結果、前回の入渠時に内航船用高性能防汚塗料を適用した試験部には汚損は見られず、次回入渠時に船体全体に当該防汚塗料を適用することにより燃費に改善がみられることが期待されます。
この小規模海事クラスター産官学共同研究では、参加各機関の各者(海運・造船・舶用・研究所・大学)の立場から技術・知見が集積できることに利点があり、海神丸の観測設備により取得した実船モニタリングデータを用いた実海域実船性能評価(OCTARVIAプロジェクト※2成果を活用)や、点群データを用いた船体三次元評価等により船体やプロペラの汚損状況や防汚塗膜の消耗状態を俯瞰で評価する技術を採用して、船体・プロペラ性能のより客観的な評価・共有を実施しています。
※1 夏季研究航海研究活動報告
※2 OCTARVIAプロジェクト:
船舶の実海域性能評価のための「ものさし」づくりを目的とした海事クラスター共同研究「実海域実船性能評価プロジェクト(OCTARVIA)」。フェーズ1を2017年10月〜2021年3月に実施し、「ものさし」(ライフサイクル主機燃費評価法)を開発しました。フェーズ2では「ものさし」の活用を目的に、2022年3月〜2024年3月に実施しました。
海上公試の模擬試験(航路) 海上公試模試での馬力増加率評価結果
水中ドローンによる調査結果 (左:プロペラの汚損状況/船体の汚損状況)
点群データを用いた入渠時の船体三次元画像評価