国際海事研究センターセミナーを開催しました
Last Update 2024.02.29
神戸大学海事科学研究科附属国際海事研究センターIMaRCのセミナーを2月22日に開催しました。IMaRCでは、海事科学分野でのフラッグシップ研究の創出を目指した研究プロジェクトが2017年10月に開始されました。これは研究科内の公募を経て研究支援を行うもので、これまでに1件の第1種プロジェクトと2件の第2種プロジェクトが終了していました。今回成果発表があったのは2021年1月からスタートした2件の第2種プロジェクトであり、ゴメス教授による「伊豆大島における津波性崩落:東京湾の災害リスク」と、山地准教授による「現場観測と数値シミュレーションによる瀬戸内海周辺地域の大気質の実態把握と社会変容に応答する大気質の評価」です。双方の発表において国際共著論文を含む学術論文を成果として発表したことと、そのためには研究ネットワークを確立しておくことが重要であると強調されました。山地先生の発表は、本来、大気シミュレーション技術に長けた先生の練習船深江丸を活用した計測結果に関する内容も含み興味深いものでした。ゴメス教授の発表ではIMaRCのプロジェクトもうまく活用して、フランスやインドネシアの大学との大学間学術交流協定MOUを活用し、さらにコチュテル(博士論文共同指導)制度も利用して共同研究が多重多層に積み上げられている学術活動が報告されました。ドローンを使った計測とともに独自の数値シミュレーションを開発・活用し、論文とともに複数の専門書を執筆しているマルチタレントの一端が披露されました。ともに教員や学生の国際的な研究交流の重要性を、生きた具体例をもって示すものであり、研究科全体にインパクトを持つ成果であると言えます。
中田准教授からは、今年度に開始した文部科学省「海洋資源利用促進技術プログラム 市民参加による海洋総合知創出手法構築プロジェクト」の紹介が行われました。社会科学として取り組まれる研究の理工系とはやや異なる難しさと、研究論文にとどまるのではなく、市民の中に新たな総合知を生み出すという難しいミッションを抱えたこのプロジェクトに特有の困難と面白さが強調されました。中田教授は、水中遺跡の専門家だけでなく、各自治体や在野の市民研究者も組織してこのプロジェクトを開始されています。今後の成果が楽しみです。
最後に、山内IMaRCセンター長の短い挨拶があり、この4月から新たなメンバーを迎えて新体制で出発すること、その中でゴメス先生が部門長に就かれることの紹介がありました。また、中田先生には国際法の専門家として総合知プロジェクトを展開し研究科における海洋政策科学の研究を牽引してもらいたいとの言葉が送られました。
【日 時】 2024年2月22日(木)10:40〜12:20
【場 所】 神戸大学深江キャンパス総合学術交流棟1階梅木Yホール
【講演1】
Tsunamigenic Volcanic Collapses at Izu Ooshima: Disaster risk in Tokyo bay(伊豆大島でおける津浪性火山崩落:東京湾の津波災害)
ゴメス クリストファー
海事科学研究科 教授(海洋システム科学研究部門)
【講演2】
現場観測と数値シミュレーションによる瀬戸内海周辺地域の大気質の実態把握と社会的変容に応答する大気質の評価
山地 一代
海事科学研究科 准教授(海洋システム科学研究部門)
【講演3】
日本における水中遺跡保存の法制度について
〜Ocean Decade Heritage Network (2021-2030) との関係〜
中田 達也
海事科学研究科附属国際海事研究センター 准教授
(国際海事政策科学研究部門)
<司 会> 笹 健児 教授(国際海事研究センター副センター長)
<閉会挨拶> 山内 知也 教授(国際海事研究センター長)