《企画展2015開催趣旨》
−企画展2015館長ごあいさつより−
神戸大学海事科学部の前身は1917(大正6)年設立の私立「川崎商船学校」に始まります。
その後、1920(大正9)年8月に官立神戸高等商船学校を創立し私立川崎商船学校を廃校、附設甲種商船学校を併置してもと私立川崎商船学校生徒を収容しました。
爾来、日本の生命線を維持するために多くの商船士官を輩出し社会的責任を果たしてきました。
先の大戦では多くの船員が人や物資輸送のために徴用されましたが、残念なことに、徴用船で殉職した船員は当時の日本人船員全体の約43%、6万人にも及びます。また、この中で8,000人以上が18歳未満の年少船員であったといわれています。
太平洋戦争における軍人の損耗率(動員された人数に対する戦死者の比率)は陸軍で約20%、海軍では約16%でありましたことから、徴用船員の比率が際立っていることがうかがえます。
戦後70年を迎え、この企画展では戦前から戦中にかけて活躍した日本商船隊とともに深江の地を巣立った数多くの船員の姿をとりあげ、日本人の記憶から次第に薄れつつある過去の不幸な事実について、その証(あかし)を残し、海事社会の平和への礎(いしずえ)となすものです。
今も昔も、そして将来も、日本にとって不可欠なインフラである海運と船員(海技者)教育並びに海洋の重要性について考えましょう。
海事博物館長