教員のエッセイ
「Notes from Tassie --- Vol.2」
さて、今回はTasmaniaについてご紹介したいと思います。
前回、南半球で州都Hobartと書いたので知らない人もだいたい想像がついたのではないかと思いますが、Tasmaniaはオーストラリアにあります。
オーストラリアで最も小さな州であるとともに、その本島はオーストラリアで最も大きな島でもあります。
位置はMelbourneの沖合約250km、赤道で折り返せば北海道とほぼ同じところになります。大きさも北海道より一回り小さいくらいで、その形から「Apple Island」、「Heart Island」という呼び名でAussieに親しまれています。
図1:Tasmaniaの位置
島の名前は発見者であるオランダ人の名前から取られたそうですが、オーストラリア大陸と同じくイギリスが植民地として開拓しました。HobartはオーストラリアでSydneyにつぐ2番目に古い街でもあります。
この島への入植が早い時期に行われた理由は、一つは流刑制度の基で囚人の送り先として管理のやりやすい島が選ばれたということ、そしてもうひとつが19世紀初頭の帆船時代において運航の重要な要素であった偏西風帯に位置しているということが考えられます。
イギリスの港を出港した船は大西洋を南下し、アフリカ大陸の南端を回って偏西風に乗り東に向かいます。その先に存在した最初の陸地がTasmaniaだったのです。
この偏西風が吹き荒れる地帯は時化が多く、船乗りたちにRoaring Forties(吼える40度線)と呼ばれて恐れられてきたのですが、この風がTasmaniaには様々な恩恵をもたらしてくれています。
Tasmaniaの西はアフリカを通り越して地球を半周し、南米大陸に行き着くまで陸地が存在しません。つまり、環境を汚染するものが何も無いのです。その澄んだ空気がたどり着く西端の岬は地球上で最も空気がきれいな場所と言われ、地球の大気汚染のモニタリングを行う測候所が設けられているそうです。
また、この風が島の西側に連なる山脈に当たって雨となり、多くの湖や原生雨林を作り出しました。この豊かな自然は世界遺産にも登録されています。
図2:島西部の国立公園(Cradle Mt.)
空気や水がきれいだからでしょうか、Tasmaniaでは雨水がペットボトルに詰められて他のミネラルウォーターといっしょに売られています。あるユースホステルでは、水道の水も飲めるけど気になるならいつでも雨水を出すからね、といわれました。
洗濯物も、雨が降っても出しっぱなしでそのまま晴れて乾くまでほったらかしの家が多いようです。
ちなみに、Tasmaniaの発音が長い? ためか、Australiaではこの州や州に住む人のことTasseieあるいはTASと呼んでいます。オーストラリア人をAussieと呼ぶのと同じなのでしょうが、初めは何を指しているのか全く分かりませんでした。(^^;) (Sailor)